社説/景気、下期から回復へ 個人消費引き出す政策を考えよ

(2021/7/22 05:00)

日本経済の本格回復には、家計の消費需要の喚起策が欠かせない。安心して飲食や旅行ができる環境整備が必要だ。

日刊工業新聞が実施した景気定点観測調査では、大企業および中堅・中小企業経営者の82%が、国内景気は2021年7―12月に「拡大」または「緩やかに拡大」すると回答した。

政府が決定した21年度年央試算でも、21年度の実質国内総生産(GDP)成長率は前年度比3・7%程度と過去最高の伸びとなる。日本経済研究センターがとりまとめた民間エコノミスト37人の予測も21年度は同3・63%とほぼ同じ水準だ。

ただしこれらの見通しはいずれも新型コロナウイルス感染拡大が、収束とはいかずとも一定レベルで抑制されていることが前提となる。ワクチン接種の促進が何よりも重要である。政府はワクチンの着実な調達と、目詰まりのない全国自治体への配分に全力を挙げてほしい。

経済回復は現状では輸出頼みとなっている。外食や旅行などのサービス消費抑制や1人10万円の特別定額給付金の支給などで、家計の貯蓄はコロナ危機前と比べて20兆円以上増加したとみられる。家計の貯蓄が消費に回れば、経済の押し上げ効果は大きい。この繰り越し需要を一過性に終わらせず、消費が続く仕組み作りが求められる。

安心して飲食や旅行に消費を振り向けられるように、感染対策を講じた店舗を認証する制度やPCR検査体制の拡充など環境整備が欠かせない。認証を得た店舗には、何らかのインセンティブを与え、事業再開の手立てとしたい。ワクチンパスポート(接種証明)も当面は海外渡航者が対象だが、国内での活用も検討すべきだ。今後の訪日外国人需要を取り込むためにも有効な対策となる。

定点観測で経営者が新型コロナに次いで経営の課題にあげたのが、中国経済・米国経済の行方。中国の威圧的な振る舞いには、先進諸国が連携して対峙(たいじ)すべきだが、いたずらに孤立をあおるのは得策ではない。産業界は自由で開かれた国際経済の実現を何よりも望んでいる。

(2021/7/22 05:00)

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