産業春秋／コロナと歯周病

「生えてくる？　マスク上げ下げ　待ち望む」。歯科材料メーカーの松風が主催する俳句・川柳コンテストで２０２１年度の最優秀賞に選ばれた。永久歯を待つ子どものかわいらしいしぐさが目に浮かぶ。保育園の「みなちゃん先生」が詠んだ。

口腔（こうくう）衛生は永久歯を長持ちさせるだけでなく、新型コロナウイルスの感染や重症化の予防になる。英リーズ大学の調査では、コロナ感染症で亡くなった人から大量の歯周病菌が見つかった。重症化リスクで歯周病は意外な盲点か。

唾液にはＩｇＡという抗体が含まれる。歯周病菌はＩｇＡの“防御力”を分散させ、コロナウイルスに対する免疫力を弱めてしまう。さらにヒト細胞へのウイルス侵入を助けることも判明している。

飛沫（ひまつ）感染を防ぐため歯磨きを中止した職場や学校もある。「口をできるだけ閉じて歯ブラシを静かに小刻みに動かし、ゆすいだ水はコップに出す」。日本歯科医師会常務理事の小山茂幸さんは、ニューノーマル時代の磨き方をすすめる。

自宅療養者の急増は続き、医療の逼迫（ひっぱく）は深刻化する。小まめな歯磨きの習慣化で“水際対策”を強化したい。みなちゃんが永久歯と出会えて、マスクを外せる日が早く訪れるように。