(2021/11/25 05:00)
原油価格の高騰対策において、備蓄の協調放出だけでは限界がある。産油国に増産を促すことこそが最善策だ。
米国が音頭をとり日本、中国、インドなど石油の主要消費国が、国家備蓄を放出する協調行動をとることが決まった。日本は過去に民間に義務づけた備蓄を放出した例はあるが、国家備蓄の放出はこれが初めて。
しかし、原油価格は一時下がったものの、上昇に転じている。放出量が市場の期待より少ないことや、中東産油国が反発して増産計画を延期する可能性がでてきたことなどが要因だ。
原油価格高騰の背景には、世界経済がコロナ禍から回復し、需要が急増しているだけでなく、脱炭素への急速な移行という構造的要因が関係している。
ニューヨーク原油先物相場は1バレル80ドル前後まで上昇している。通常なら70ドルを上回ると産油国に増産の動きが見られる。それが今回は中東産油国の増産の動きは緩慢で、米国もシェールオイル増産には消極的である。
石油や石炭などの化石燃料の採掘は、脱炭素を志向する世界の中で、いずれは投資した資金が回収できない「座礁資産」になるとして、投資が停滞している。産油国にはリスクをとって新規の油田開発を行うよりも、今ある油田をできるだけ長持ちさせ、より高い価格で売りたいという思惑が働いている。
冬場の需要期入りを目前に、原油需給がタイトな状況が続けばさらなる価格上昇は避けられない。かといって石油の国家備蓄は本来、国際紛争や大規模災害など、有事に備えたものであり、過度に放出すれば真に必要な時の備えが危うい。
現状の打開には、産油国に増産を訴えることが必要だ。脱炭素を目指すとしても、足元で石油高騰が世界経済に悪影響を及ぼしているのは明らかである。
産油国・消費国が協議し、産油国が適切な投資を得て短期的には増産をしつつ、中長期の視点でゆるやかに脱炭素に対応した国家運営に移行する将来像を検討する必要がある。米国自身も自国の開発方針を明確に示すべきだ。
(2021/11/25 05:00)
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