(2021/12/28 05:00)
脱炭素など地球規模の環境・社会問題に対する人々の向き合い方が、新型コロナウイルス感染症を機に変わりつつある。中長期視点の未来社会に、個々人の身近な思いを重ねることで、これまでとは異なる社会変革の進展が期待されそうだ。
新型コロナに先立つ世界的な感染症として、エボラウイルスや中東呼吸器症候群(MERS)などの脅威が存在していた。しかし日本にとっては遠い国の話で“人ごと”だった。地球温暖化でも、気候変動は感じつつも海面上昇で消滅する島国の深刻さを“自分ごと”と捉えていなかった。
しかし私たちは新型コロナを経験し「世界的、中長期的、潜在的な課題に目が向くようになってきた」。大阪市立大学発ベンチャー、SIRC(サーク、大阪市中央区)の高橋真理子社長はこう指摘する。
同社は超小型磁性薄膜センサー素子を核とした、電気やガスのIoT(モノのインターネット)センサーで、省エネルギーの管理システムを提案している。国際社会の脱炭素化でニーズが高まる中、顧客の意識が以前と異なっているという。営業現場でも「優れた技術で即、活用できます」より、「社会を変えるにはこれが必要です」が響くのだという。
これまで優先事項は企業の経済活動や個人の生活だったのが、多くの人が未来社会の問題に思いを巡らせるように変わりつつある。「コロナ禍という非常時で立ち止まり、気づきを得ることができた」と高橋社長はみる。新型コロナ前は配水管の漏水探知で、アフリカも行き来していた30代女性社長だけに、感慨は人一倍だ。
この意識転換を社会変革につなげるには、社会で主役となる若い世代が特に重要だ。近年の若者は、性的少数者を含む多様性や社会的起業、ボランティア活動などで、年長世代より先進的な価値観を持ち、実際に行動する頼もしさがある。
個人と社会の新たな関係構築に向け、年長世代も彼ら・彼女らの挑戦を応援しながら、変わっていかなくてはならない。
(2021/12/28 05:00)
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