(2021/12/29 05:00)
2022年4月から中小企業でもパワーハラスメント対策が義務化される。中小ではトップの姿勢が決め手になる。企業価値向上へ体制整備を急ぎたい。
改正労働施策総合推進法ではパワハラについて「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること」と定義している。暴力行為は言うに及ばず、部下を同僚の前で叱責(しっせき)したり、就業時間外に飲食を強要したりするケースも該当する。
従業員のうつや自殺の原因になれば、企業の信用力は低下し、採用や業績に悪影響を及ぼしかねない。違反企業は厚生労働省による助言、指導、勧告の対象になり、悪質な場合は社名を公表されることもある。
厚労省「職場のハラスメントに関する実態調査」(20年10月実施)によると、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は3割を超える。内容は「精神的な攻撃」(49・4%)、「過大な要求」(33・3%)、「個の侵害」(24%)の順で上位を占める。
義務化により中小企業は、パワハラを行ってはならない旨を方針に明記し、行為者は懲戒処分になることを就業規則に定め従業員に周知する。併せて従業員が相談しやすい窓口をつくり、行為が確認できた場合は被害者と行為者に適正な措置を講じる。また当事者が不当な扱いを受けないようプライバシー保護を徹底しなければならない。
パワハラに過敏になるあまり人材育成がおろそかになってはいけない。パワハラに該当するかどうかは事柄の性質や信頼関係による。上司が建設現場で工具を落とした部下を厳しく叱りつけるのは、重大事故につながる「ヒヤリ・ハット」を防ぐうえで重要なことだ。
「中小企業では社長が行為者の場合、多くは本人が自覚していない」と、企業のパワハラ問題に詳しい弁護士は指摘する。景気が回復すれば採用環境は再び厳しくなる。パワハラ対策は人材の獲得や定着に欠かせない時代になった。経営戦略そのものと肝に銘じたい。
(2021/12/29 05:00)
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