(2022/1/25 05:00)
米国の生物学者レイチェル・カーソンの『沈黙の春』が出版され60年になる。「奇跡の農薬」ともてはやされたDDTの生態系汚染を告発した警世の書だ。
「自然は人間が勝手に考えるほどたやすくは改造できない。昆虫は昆虫で人間の化学薬品による攻撃を出し抜く方法をあみ出している」。全体を貫く自然共生の思想は現代こそ道標になる。
「科学技術の進歩は大切だが、やり方が乱暴すぎる。結果として人間が苦しむことになる」とレイチェル・カーソン日本協会関西フォーラム代表の原強さん。コロナ危機も人間が後先考えず進歩を追いかけた帰結か。
最終章「べつの道」では生き方の選択を迫る。「私たちは、いまや分かれ道にいる。(略)すばらしい高速道路で、すごいスピードに酔うこともできるが(略)行きつく先は禍(わざわい)であり破滅だ」。
コロナは変異を繰り返し、今は人間が「沈黙の春」をさまよい続ける。宿敵のようなウイルスでさえ何らかの「利他性」があって地球上に存在しているのだろう。自然との向き合い方を改めない限り、地球の安全を守れる「もう一つの道」の扉は開きそうにない。自然界からの逆襲に、レイチェルの嘆息が聞こえてきそうだ。
(2022/1/25 05:00)
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