(2022/2/10 05:00)
天然ガスをめぐる世界の需給状況が不安定さを増している。短期だけでなく、中長期の視点で対応策を考えるべきだ。
波乱の最大要因は、ロシアによるウクライナ侵攻の恐れが大きくなっていることだ。もし現実となれば欧州各国が制裁措置としてガス購入の停止に踏み切るか、逆に制裁に反発してロシアが欧州へのガス供給を停止するかの瀬戸際にある。
欧州は天然ガスの約4割をパイプラインを経由したロシアからの輸入に頼っている。特定国に過度に依存する欧州のエネルギー政策の失敗と断じるだけではすまない。ロシア以外からの調達急増は世界の天然ガス価格の高騰を招き、新興国、途上国経済に多大な悪影響を及ぼす。
ロシアにウクライナ侵攻を思いとどまらせることが最善策である。平和的解決へ、首脳外交を粘り強く続けてもらいたい。
米国はドイツに、ロシアとの新たなガスパイプラインの運用を思いとどまるよう要求した。同時に米国産ガスの欧州への供給拡大に加え、同盟国にも協力を要請した。これに呼応して日本政府も欧州に液化天然ガス(LNG)の融通を決めた。しかし国内需要も逼迫(ひっぱく)しており、融通できる量は限られている。
いずれにしろ、当面天然ガス価格は高止まりが避けられない。コロナ禍が回復すればさらなる需要拡大も予想される。
エネルギーの脱炭素化が加速する中で、石炭だけでなく天然ガスへの投資も手控えられる傾向にある。しかし、安定供給と脱炭素を両立させるには、温室効果ガス排出割合が石炭より低い天然ガスは、必要なエネルギー源であるのは明らかである。
米国、豪州、中東などの産ガス国と消費国が協調し、採掘への再投資を進め、供給量と価格の両面を安定させる方策を構築していく必要がある。
過去にはエネルギーの供給途絶が大戦の要因となった例もある。国際協調が求められる局面だ。日本は中国に抜かれたとはいえ、世界第2位のLNG輸入国で産ガス国との関係も深い。率先して協調の枠組みづくりに貢献してもらいたい。
(2022/2/10 05:00)
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