社説/令和臨調に期待する 経済・社会変革の先導者たれ

(2022/3/2 05:00)

 政治変革だけでなく、国民の意識改革を進めてほしい。

 日本生産性本部は「令和国民会議(令和臨調)」を発足した。茂木友三郎日本生産性本部会長(キッコーマン取締役名誉会長)や小林喜光三菱ケミカルホールディングス取締役らが共同代表となり、産学の有識者らが当初80人参加。6月に正式発足する。

 茂木共同代表は「平成から先送りされてきた改革課題に党派を超えて取り組み、国民の合意を形成したい」と狙いを話す。世界に戦争や新型コロナウイルスの暗雲が広がる中で、民間が主導する国民運動は時宜を得た取り組みである。

 民間の臨調は、政府の「第二次臨時行政調査会(土光臨調)」で活躍した亀井正夫・社会経済生産性本部元会長(住友電気工業元社長・会長)が主導した「民間政治臨調」や「21世紀臨調」の例がある。いずれも政治改革の推進を訴え、政治資金の透明化やマニフェストの提示などを後押ししてきた。

 新たな令和臨調は、より幅広いテーマに取り組む。政治に関しては、自国の利益のみを追求する指導者が将来台頭する状況を強く懸念する。同時に日本独自の課題として財政と社会保障の持続性、少子・高齢化を直視した国土構想を採り上げ、専門部会を通じて提言をまとめる。

 かつて日本は「経済一流、政治は三流」と評された。しかし近年は経済が伸び悩み、世界における存在感も低下している。デジタル化の遅れ、イノベーションによる新規産業の創出では韓国や台湾などアジア新興国・地域にすら劣後する。この結果としての”貧しさ”が、国民の不満と閉塞(へいそく)感を生んでいる。

 令和臨調の共同代表メッセージは「経済成長の余剰幻想を引きずりながら眼前の安楽にその都度身を任せ、自己満足のうちに時間を費やす」ことを「日本型ポピュリズム」として批判している。日本が〝経済敗戦〟から立ち上がるには、政治だけでなく国民の意識を変え、より変革を受容する社会を目指さねばならない。産学の有識者が先導者となることを期待する。

(2022/3/2 05:00)

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