(2022/3/3 05:00)
地球温暖化とウクライナ侵攻が複合して深刻化しつつあるエネルギー危機に、賢く立ち向かわなければならない。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、気候変動が自然や社会に及ぼす影響に関する報告書を公表した。人類が排出する二酸化炭素が豪雨や猛暑を頻発させ、33億―36億人が異常気象に対応できない脆弱(ぜいじゃく)な状況に置かれていると警鐘を鳴らした。
飢餓や経済悪化で大量の難民が発生すれば、地域の政情不安を誘発する。脱・炭素は、人類が避けて通れない課題だ。
一方、足元で世界が直面しているのはロシアによるウクライナ侵攻に伴う原油・天然ガス価格の高騰である。ニューヨーク原油先物価格は一時1バレル109ドル台の高値を付けた。国際エネルギー機関(IEA)は加盟国が備蓄する石油を計6000万バレル協調放出することを決めた。
英BPやシェルがロシアでのエネルギー開発から撤退する方針を表明。短期的な経済制裁だけでなく、長期にわたりロシアからの天然ガス供給が途絶える恐れが台頭している。
長期的な視点なら、化石燃料依存からの脱却をはかるチャンスと言えよう。しかし現実問題としては、原油やガス供給の不足による異常な価格高騰は世界経済を脅かす。物価上昇で生活が苦しくなるばかりでなく、途上国では人命に関わる。
日本は再生可能エネルギーへの急激なシフトではなく、化石燃料を効率利用するトランジション(移行)の方針を追求してきた。天然ガスや石炭を燃やしながら、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)など技術力で低・脱炭素化する。今こそ、こうした技術を世界で共有する必要があろう。
同時に安全性が確認された原子力発電所の稼働や高効率蓄電池など、多角的なアプローチを模索したい。
IPCCでロシアの科学者が異例の謝罪した姿は、今の世界を映す象徴とも言える。複合的な要因をすべて排除はできないが、世界の叡智を集めることは可能である。
(2022/3/3 05:00)
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