(2022/3/11 05:00)
11年前の3月11日、その地を襲った津波は人々の生活基盤を押し流した。東日本大震災で被災し、人が消えた仙台市若林区の藤塚地区。名取川河口に近く、海はそばにある。今春、この地の再生が新しい形として始まる。
核となるのが温浴施設を軸とした複合観光施設「アクアイグニス仙台」。同地区で4月21日の開業を予定する。“癒やしと食”により、創造的な復興を志す。運営会社は深松組(仙台市青葉区)など3社で立ち上げた。
震災当日、藤塚地区で堤防工事に携わっていた深松組。運営会社のトップも担う社長の深松努さんは「未来への一歩を踏み出す」と、国内外から人が集うにぎわいを展望する。再生に向けては「食」が新たなキーワードになる。
食の監修は、スイーツなどの辻口博啓さん、イタリアンの日高良実さん、和食の笠原将弘さんと著名な料理人が協力する。2月末に仙台市内で開かれた会見で辻口さんは「新しい菓子づくり」に意欲を示した。
ここで生まれる料理のレシピは惜しげもなく地域の人々に伝えていく考えだ。今後の食文化を支える若者らの育成も期待される。開業までもう間もなく。ぜひ地域再生の新たな形を目にしてほしい。
(2022/3/11 05:00)