社説/経済安保推進法(上)政省令、経済界・中小に配慮を

(2022/5/11 05:00)

岸田文雄政権の看板政策の一つ、経済安全保障推進法案が11日の参院本会議で可決・成立する見通しだ。政府は成立後、経済界などの意見を踏まえて政令・省令を策定し、具体的な規定をまとめる。経済活動や海外企業との連携などを過度に阻害せず、日本経済の成長に資する内容とすることが求められる。

また政令・省令は国益に関わるだけに、政府は国民・事業者に説明を尽くしてもらいたい。

グローバル化とデジタル化により世界経済は密接に連携し、それゆえ地政学リスクやコロナ禍、米中対立などでサプライチェーン(供給網)が寸断されやすい経済安保の課題も抱える。国外流出した技術の軍事転用やサイバー攻撃など、経済は安全保障なしに語れなくなった。

2023年度から段階的に施行される経済安保推進法を契機に、日本経済の新たな成長軌道を描きたい。

法律は「供給網の強化」「基幹インフラの事前審査」「先端技術の官民協力」「特許の非公開」の4本柱で構成する。供給網の強化は、半導体や医薬品など「特定重要物質」が安定供給されるよう、国が企業の調達先を調査する。また基幹インフラは懸念のある外国製品が使用されていないかを事前審査する。

官民協力は機微情報(国家機密など慎重に扱うべき情報)を含む人工知能(AI)や量子などの技術情報を共有し、先端技術の研究開発につなげる。安保に民間技術を取り込む狙いもあり、企業には守秘義務を科す。軍事関連で国民の安全を損なう技術の出願は非公開にできる。

これら施策の多くは「規制」の一方で「資金支援」があるが、罰則規定もある。

問題は罰則というよりも経済活動の自由度の行方だ。事前審査が必要な基幹システムの対象とは何か、中小企業も例外で事前審査を受ける場合があるのか、「特定重要物質」の定義などが国会審議を経ずに政令・省令で決まる。世界経済の変化に機動的に対応するには政令・省令は便利だが、経済界の意見や中小企業への負担を勘案した内容に仕上げてもらいたい。

(2022/5/11 05:00)

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