(2022/6/16 05:00)
ソ連時代の末期、ゴルバチョフ政権は軍需生産の民需転換を進めようとした。だが軍事技術はコスト感覚がゼロに等しい。民生部門のニーズと全く合致しなかった。
軍民転換は遅々として進まず、科学技術の研究者は50万人強減少した。新生ロシアになると市場経済化で興隆しつつある流通、金融、保険などへの転職が増加。「国内頭脳流出」と呼ばれる現象が続いた。
ロシアのウクライナ侵攻を機にIT技術者の「国外頭脳流出」がやまない。国際的に孤立を深め、言論統制が強まる国に展望を持てないとみたのか。プーチン政権は兵役の延期で流出を食い止めようと躍起だ。
翻って日本は基礎、応用とも研究力の低下が叫ばれて久しい。岸田文雄政権は成長戦略の柱として10兆円規模のファンドで世界最高水準の研究力を目指す大学への支援を打ち出した。科学技術立国への道を開きたいが、対象が旧帝大など一部の大学に限られないか気がかりだ。
イノベーションは予測不可能な要素がある。「選択と集中」が常に有効とは限らず、まずは広く種をまくことが肝要だ。地方の国立大や私立大で個性豊かな研究成果が出始めている。ロシアの頭脳流出は対岸の火事であってほしい。
(2022/6/16 05:00)
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