産業春秋／40年目の「ルックイースト」

マレーシアのクアラルンプールにある「スマートトンネル」。平時は自動車が走行するが、豪雨時には河川の水を一時的に流す機能を発揮する多目的トンネルだ。渋滞緩和と洪水被害軽減の両立を図る大胆な発想から生まれた。

都市型洪水の脅威にさらされるのは東京も同じ。環状７号線地下にある都内最大の調節池は洪水の一部を貯留する機能を持つ。２０１９年に首都圏を直撃した台風１９号では神田川などから水があふれ出ることを防いだ。

共通課題を抱える首都が互いの知見を共有し、協力関係を深めている。２２年５月にクアラルンプール市の担当者が東京を訪れた際には都内の調節池を視察。７月には都の技術派遣団がクアラルンプール市を訪問した。

くだんの“トンネル”や建設中の雨水貯留施設、ダムなどを訪れたという。９月１日から２日にかけては小池百合子知事が同市を訪問。上下水道も含め、今後のインフラ技術協力について覚書が交わされる見通しだ。

マハティール元首相が「東方政策（ルックイースト）」を提唱して今年で４０年。日本の近代化を手本とした政策は、両国が都市の持続可能性という共通課題を互いに追求する新たな局面を迎えている。