(2022/9/19 05:00)
今年は「国会等の移転に関する法律」の制定から30年になる。首都機能移転は候補地の選定まで進んだが、議論はしぼんでしまった。超過密都市の災害リスクより、経済効率や利便性が勝ったのだろう。
名古屋大学減災連携研究センター教授の鈴木康弘さんは「もう一度、首都機能移転について議論するべきだ」と主張する。深刻な大災害の発生は疑いようがないのに「政治家も国民も不都合な真実から目を背けている」。
東日本大震災の教訓は生かせているだろうか。「対策は『できた』ことにして、本当の実力を確認しようとしていないのでは」。国民の日常の備えも震災前からさほど進展しているようには思えない。
大災害に対応する国の司令塔機能は、世界有数の地震多発国に見合ったものになっているか。既存の官庁は平時のためのものであって、首都直下地震などに通常業務の付け足しで対応するのは難しい。
「米国など他国を見ならって非常事態庁か防災庁をつくらなければ駄目だ」。鈴木さんは社会全体の危機を回避・軽減するリスク管理のプロが必要と訴える。あの時やっておけばという後悔はしたくない。岸田文雄政権の新しい国づくりは後世に何を残すのだろう。
(2022/9/19 05:00)