産業春秋／欧州で右派が存在感

　欧州で内向きの“右派”が存在感を高めている。１１日のスウェーデン総選挙では、反移民のポピュリスト政党「スウェーデン民主党」など右派勢力が議席の過半を占めた。大量の移民と増え続ける犯罪が福祉国家を脅かしているとの有権者の選択だ

　２５日投開票のイタリアの前倒し総選挙でも極右ポピュリスト政党「イタリアの同胞」が第１党をうかがう。エネルギー価格をはじめとする物価高騰に苦しむ有権者に、保育所無償化などの支援策を訴える

　４月の仏大統領選では現職・中道のマクロン氏が再選を果たしたものの、極右「国民連合」のルペン候補に追い上げられた。ロシアへの経済制裁が急激な物価高を招いたとして、付加価値税減税などを訴えていた

　欧州は移民や格差問題を抱え、英国の欧州連合（ＥＵ）離脱に象徴される保護主義への傾斜が潜在的にくすぶり続けている。ウクライナ情勢に伴う経済への不満や、軍事支援などでの“ウクライナ疲れ”が有権者を内向きにさせているとの指摘もある

　対中ロで西側陣営の結束が弱体化することがあってはならない。エネルギーの調達不安や歴史的なインフレが欧州にとって大きな転換点となるのかを注視していきたい。