社説/消費者物価さらに上昇 日本だけ「マイナス金利」警戒を

(2022/9/21 05:00)

物価上昇が止まらない。総務省が20日発表した8月の消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は前年同月比2・8%上昇し、102・5となった。消費増税の影響を除けば、1991年9月以来約31年ぶりの高い上昇率だ。米連邦準備制度理事会(FRB)が21日に大幅な利上げに動き、スイス国立銀行は22日にマイナス金利政策から脱却するとみられている。円安進行が一段の物価上昇を招かないかを注視したい。

8月の消費者物価指数の上昇率2・8%は米国の8・3%やユーロ圏の9・1%より低いものの、エネルギーや食料品は2ケタ台の伸びを示している。電気代は前年同月比21・5%、ガス代は同20・1%、食用油は同39・3%それぞれ上昇した。ウクライナ情勢に伴う資源・原材料価格の高止まりと円安が輸入物価を押し上げる状況が続く。

9月は欧米中央銀行の会合がめじろ押しで、日銀とは真逆の金融引き締めが相次ぐ見通しだ。米FRBは21日に政策金利を0・75%引き上げる案が有力視され、イングランド銀行とスイス国立銀行はそれぞれ22日に0・5%引き上げると市場では想定されている。中でもスイスはこれでマイナス金利政策から脱却することになる。そうなれば主要国の中で同政策を続けるのは日本のみになってしまう。

市場で円がマイナス金利通貨と強く意識されれば、円を高金利通貨に替えて資産運用する「円キャリー取引」が拡大する可能性がある。一段の円安進行が輸入物価をさらに高騰させる事態を警戒する必要がある。

日本政府は物価対策を含む総合経済対策の裏付けとなる22年度補正予算案を、10月3日にも召集する臨時国会に提出する。自民党の萩生田光一政調会長は30兆円超の規模が必要との認識を示しており、有効な対策を講じてもらいたい。ただ21年度決算では使う必要のなくなった6兆円超の不用額や、21年度内に使い残した22兆円超を22年度に繰り越した経緯がある。額ありきでなく、必要な歳出を一つひとつ積み上げ、財政規律を順守することも政府に求めたい。

(2022/9/21 05:00)

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