社説/総合経済対策 景気下支えも「額ありき」に懸念

(2022/10/27 05:00)

政府は物価高や賃上げの対策などを盛り込んだ大規模な総合経済対策を月内に閣議決定する。エネルギーや食料品の高騰に対応した企業・家計への負担軽減策が講じられ、個人消費や設備投資に及ぼす物価高の影響が緩和されると期待したい。

ただ同対策はこうした緊急な対策にとどまらす、岸田文雄政権の看板政策「新しい資本主義」実現に向けた中長期の施策も盛り込まれる。本来なら当初予算案に編成すべき内容も含まれ、「金額ありき」の対策になっていないか、財政規律の観点からも中身を注視したい。

自民党の茂木敏充幹事長は総合経済対策の規模が約26兆円に達すると示唆する。巨額の2022年度第2次補正予算案を11月に国会に提出し、年内の成立を目指すことになる。赤字国債の発行を伴うだけに、23年度当初予算案はこの補正予算案との重複を避け、財政健全化に配慮した編成を求めたい。

総合経済対策は「物価高騰への対応と賃上げの加速」「円安を生かした地域の『稼ぐ力』の回復・強化」「新しい資本主義の加速」「国民の安全・安心の確保」が4本柱。喫緊の課題は物価高対策だ。政府は来春の電気料金が2―3割高騰すると見込み、この負担軽減を毎月の請求書に直接反映する形で講じる。年末が期限のガソリン補助金は23年1月以降も継続する。景気の下支えが期待される。

ただ富裕層も一律に負担軽減するべきか、どこまで電気料金が下がれば支援を終了するのか、公平性や出口戦略などいくつかの課題も残したと言える。

総合経済対策はインバウンド(訪日外国人)消費拡大や、半導体・蓄電池など戦略物資の供給網の再構築・国内回帰、賃上げに向けた労働市場改革と「新しい資本主義」の実現など、時間軸から補正予算にふさわしいのか不透明な歳出項目も盛り込まれる見通しだ。補正予算は緊急な歳出を積み上げることが求められ、当初予算の“隠れみの”としてはならない。景気の下支えと同時に財政にも目配りすることの重要性は、英国の首相交代からも学ぶことができる。

(2022/10/27 05:00)

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