(2022/11/25 05:00)
サッカーの第22回ワールドカップ(W杯)カタール大会の1次リーグで、日本はW杯優勝経験のあるドイツを破る歴史的な勝利を収めた。日本サッカーが新たなステージを迎えたと素直に喜びたい。今大会は山下良美さんら6人の女性審判も誕生した。女性活躍が広範な分野で広がることが期待される。一方、カタール大会は外国人労働者や性的少数派への差別など多くの課題も露呈させた。宗教による価値観の違いだけで片付けて良い問題なのか。今大会は人権を深く考える端緒にもしたい。
W杯の開催地がカタールに決まった2010年以降、スタジアム建設などで多くの外国人労働者が犠牲となり、その労働者も違法な低賃金や支払いの遅延など差別を受けていたという。6500人が死亡したとの海外の報道もある。またイスラム教徒が多いカタールでは同性愛が法律で禁止され、結婚や留学などで女性の人権が制約される。
国際サッカー連盟(FIFA)はスポーツと政治を切り離すべきと主張する。だが参加国の間では外国人労働者への補償を求めたり、公共の場での観戦を控えるなど抗議の動きが広がる。国際労働機関(ILO)によると、カタールで8月末に成立した複数の法律により、国籍を問わず全ての労働者に同一の最低賃金を支給するほか、移民労働者には使用者の許可を得ずに転職する自由が認められるようになったという。適正に運用されているかを継続的に確認する必要がある。イスラム教の価値観を尊重しつつ、世界共通の課題である人権を守る歩みを着実に進めることが求められる。
カタール大会は招致の買収疑惑も指摘されている。汚職や人権侵害が取り沙汰される中、招致が決まった当時のFIFA会長は「(招致は)間違いだった」と振り返っている。開催地にふさわしい国だったのか、決定プロセスの透明性もまた、重要な課題として残ったと言える。
世界的な大規模イベントのサッカーW杯。心から楽しめる大会に発展するよう課題・疑惑が払しょくされることを期待しつつ、日本の躍進に期待したい。
(2022/11/25 05:00)