社説/日銀緩和修正の副作用(下)収益基盤強化し変化に備えたい

(2023/1/12 05:00)

日銀による事実上の利上げにより日米金利差が縮小し、円高基調が輸入物価を引き下げる効果が期待される。ただ金融緩和が一段と縮小されれば、住宅ローンのみならず企業向け貸出金利の上昇も懸念されてくる。これら副作用を軽減するため、消費者マインドを冷やさない賃上げに加え、企業は生産性向上などで収益基盤の強化を進め、環境変化に備えておきたい。

日銀が2022年12月に容認する長期金利の上限を0・25%程度から0・5%程度に引き上げたことに伴い、大手銀行各行は1月から新規に貸し出す住宅ローンの10年固定金利を0・10―0・34%引き上げた。短期金利連動の変動金利は据え置いている。変動金利は住宅ローンの約7割を占め、住宅市場への影響は限定的との見方もある。

ただ金融市場では日銀によるさらなる金融緩和の縮小が意識され、懸案の物価高もしばらく収束しそうにない。22年12月の東京都区部の消費者物価指数(速報値、生鮮食品を除く)は前年同月比で4%も上昇し、40年8カ月ぶりの高水準の伸び率だった。個人消費や住宅需要に大きな影響を及ぼさないよう、意欲的な賃上げにより家計のマインドを支える必要がある。

日銀の金融緩和縮小が進めば企業の利払い負担も重くなる。中でも実質無利子・無担保融資「ゼロゼロ融資」の返済が23年に本格化する中小企業は、台所事情がさらに厳しくなる。仕入れ価格の高騰分を価格転嫁できていない中小企業も先行きが懸念される。帝国データバンクによると、ゼロゼロ融資により減少していた企業倒産件数は22年に3年ぶりに増加に転じるという。23年も楽観視できない。

政府は価格転嫁への目配りはもとより、ゼロゼロ融資の返済負担を軽減する新たな借り換え保証制度も訴求し、中小企業を側面支援してもらいたい。

日銀総裁の任期満了を4月に控え、金融緩和の縮小は新体制を見据えた地ならしとの見方もある。出口戦略は遠いものの、金融正常化に向けた段階的な政策修正を見越し、企業は今から対応力を強化しておきたい。

(2023/1/12 05:00)

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