(2023/2/1 05:00)
産学の有識者らで構成する令和国民会議(令和臨調)が政府と日銀の政策対応について緊急提言をまとめた。政府・日銀による2013年の「共同声明」がもたらした副作用を検証し、修正するよう求めた。異次元金融緩和がもたらした財政規律の緩みや、金融緩和による「ぬるま湯」的な環境が生産性向上や賃上げを抑制した側面があるのは否めない。国際通貨基金(IMF)も日銀の金融緩和に修正案を示している。異次元緩和の徹底した検証が求められる。
「できるだけ早期」に2%の物価上昇目標の達成を目指す共同声明に対し、令和臨調は「長期的な目標」に修正するよう提言した。物価上昇の早期達成目標が異次元緩和を招き、日銀による国債の大量購入に依存したバラマキ的な財政支出につながった。金融緩和による「ぬるま湯」的な環境により、新しいビジネスモデルや変革に挑戦する投資や起業は増えなかったと手厳しく指摘した。生産性向上や賃金上昇を政府・日銀の共通目標とすることも求めている。
異次元緩和は円安・株高を誘い、雇用情勢も改善するなど一定の成果を上げてきた。だがアベノミクスの「3本の矢」は金融緩和に依存し過ぎる“一本足打法”となり、共同声明からほぼ10年を経て異次元緩和はむしろ副作用が問題視されている。日銀が現行の金融緩和を検証・修正し、政府が構造改革に軸足を置いて新たな成長軌道を模索するのか。2月中に日銀新総裁の人事案が国会に提出される。まずは人選を注視したい。
他方、IMFも年次の対日経済審査後の声明で日銀の金融政策に言及し、0・5%以下としている長期金利の上限に柔軟性を持たせ、市場の歪みを是正することを選択肢として提案している。金利操作のあり方を見直す時期を迎えていると言える。
日銀は国債発行残高の過半を保有する異常事態にある。政府は日銀という安心できる国債の引き受け手があることで歳出圧力が強まり、財政規律が緩くなった経緯がある。日銀の国債購入が緩和されれば、財政健全化を促す効果も期待できる。
(2023/2/1 05:00)