(2023/2/6 05:00)
急成長してきた米IT大手が転換期を迎えている。大手5社の2022年10―12月期は全社が当期減益に転じ、大規模な人員削減を余儀なくされている。追い打ちをかけるように、米欧は巨大IT企業の市場独占是正に向けた規制強化に動く。米IT大手は人工知能(AI)など新たなけん引役を模索するが、どこまで成長軌道を取り戻せるかは不透明。各社の戦略と規制強化の行方を注視したい。
アップル、アマゾン・ドット・コム、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、メタ(旧フェイスブック)、マイクロソフトの22年10―12月期は前年同期比12―98%減と大幅な当期減益だった。アップルを除く4社が計5万人超の人員削減を表明するなど、コロナ禍のデジタル特需の反動に直撃されている。
コロナ禍では企業のデジタル化やリモートワーク、巣ごもり需要などを受け、クラウド事業やネット広告、ネット販売などが急拡大した。だがコロナ禍一服で特需は縮小し、物価高に対処した主要国の金融引き締めが企業の投資を鈍らせた。中国のゼロコロナ政策による行動制限もアップル「iPhone」の生産・販売に影響を及ぼした。IT大手各社は合理化と同時に戦略の練り直しも求められる。
各社が注目するのがAI。マイクロソフトはAIを使った自動応答システムを保有するスタートアップへの追加出資を決めたほか、アルファベットによるAI新興企業への出資も報じられている。新たな成長に向けた投資の広がりに注目したい。
他方、米欧は米IT大手の規制強化に動いている。欧州連合(EU)は、アプリ開発者に対する自社決済システムの利用義務付けなどを禁止するデジタル市場法(DMA)を今春から適用。米司法省はグーグルのネット広告事業を反トラスト(独占禁止法)違反の疑いで提訴し、バイデン米大統領は超党派で米IT大手への規制強化を法案化するよう呼びかけている。これまで米IT大手のロビー活動で規制強化は進まなかった。転機を迎えたIT各社が健全な成長軌道を描くことを期待したい。
(2023/2/6 05:00)