社説/106万・130万円の壁 公平性と財源確保へ審議深めよ

(2023/2/9 05:00)

「106万円の壁」や「130万円の壁」をいかに見直すかが女性の働き方や人手不足対策の論点の一つになっている。年収が一定額を超えると社会保険料を納める必要があり、あえて労働時間を短くし、低賃金とする傾向がある。ただ社会保険に加入する年収を引き上げると年金財政が不安定になり、新たな財源が必要になる。また壁そのものを撤去すると保険加入者が増え、保険料を折半する企業の負担が増える。財源を含め、踏み込んだ国会審議を求める。

“壁”は社会保険(厚生年金・健康保険)への加入が必要となる年収の基準で、条件に応じて106万円と130万円の壁がある。パートタイマーの主婦ら短時間労働者は、従業員101人以上の企業では年収が106万円を超えると配偶者の扶養から外れ、社会保険料の負担が発生する。同100人以下の企業なら同130万円超で社会保険料を納める必要がある。

自民党内には、年収130万円超で発生した保険料負担を国が一定期間給付する案がある。また年収の基準を引き上げる案も想定される。いずれも短時間労働者が勤務時間を延長し、懸案の人手不足を緩和する効果を見込めるかもしれない。ただ独身女性は年収130万円超でも社会保険料を納めており、公平性の観点で党内でも意見が分かれる。また目減りする年金財源を穴埋めする財源を確保する必要がある。公平性と財源問題は児童手当の拡充と合わせ、国会で審議を深めてもらいたい。

壁そのものを完全に撤去し、誰もが社会保険に加入するという考え方もある。短時間労働者にとって目先の負担は増えるが、老後の備えになる。政府の年金改革は保険適用の対象拡大を目指している。足元の負担を軽減するのか、将来の安心を優先するのか、国民に問いかける姿勢も政権には求められる。

社会保険の適用対象が拡大すると、保険料を折半する企業の負担が増すことになり、産業界の反発も想定される。防衛財源には法人税も含まれている。企業への過度な負担とならない目配りも政権には求めたい。

(2023/2/9 05:00)

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