(2023/2/8 05:00)
半世紀の空白を埋められずに開発を断念した国産ジェット旅客機、10年の遅れを取り戻そうとラストチャンスに挑む半導体―。日本のモノづくりの復権を願わずにはいられない。民間主導の旅客機開発には限界があったとみられ、政府が後押しする先端半導体の国産化は所期の目的を確実に完遂したい。
三菱重工業は国産初のジェット旅客機「スペースジェット(SJ)」の開発を中止し、事業から撤退する。安全性を証明する「型式証明」取得のための開発が進まず、2020年10月には開発を凍結していた。開発費は累計1兆円規模に達する。採算を取れる見通しが立たず、撤退を決断した。新たな産業の育成という所期の目的を達成できず、残念な幕引きとなった。
国産プロペラ旅客機「YS―11」が初飛行した1962年以来、半世紀ぶりとなる08年に国産初のジェット旅客機の事業化が決定。この間、日本メーカーはサプライヤーとして米ボーイングなどに部品供給してきたが、航空機「全体」を設計・製造するノウハウを取り戻すには半世紀の空白は長過ぎた。設計変更や製造工程の見直しにより、6度も納期が延期。コロナ禍からの小型旅客機の回復が見通せないことも引き金のようだ。
スペースジェットの部品は約100万点、自動車は3万点程度とされる。産業のすそ野が広く、製造業の基盤強化が期待されていた。それだけに今回の事業撤退は悔やまれる。
半導体は10年の遅れを取り戻そうと“日の丸連合”がラストチャンスに挑む。先端半導体の国産化を目指す「ラピダス」は27年にファウンドリー(製造受託企業)として量産開始を目指す。先端半導体は台湾が9割を生産し、台湾有事も見据えた経済安全保障の観点から国産化が待たれる。米IBMと共同で回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の製品化を目指す。
日本政府は22年度第2次補正予算で半導体関連に1・3兆円を確保した。日本の半導体復活には10年で10兆円の官民投資が必要との指摘もあり、長期にわたる政府支援を求めたい。
(2023/2/8 05:00)
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