(2023/2/24 05:00)
ウクライナ情勢は歴史的なインフレを招いたほか、世界経済の分断も浮き彫りにした。エネルギー・食糧の高騰による急速なインフレを抑制するため、米欧が講じた金融引き締めが世界経済を大きく減速させた。他方、ロシアに制裁を科す西側諸国に対し、中国やインドを筆頭に一線を画す国が少なくなく、ロシアは孤立しなかった。西側諸国はフレンド・ショアリング(友好国で結ぶ供給網)拡大に向けた結束を強化したい。
国際通貨基金(IMF)によると、ロシアがウクライナに侵攻する以前の2021年に6・1%だった世界の実質成長率は22年に3・4%まで減速。22年の世界のインフレ率は8・8%にまで上昇した。23年はインフレに歯止めがかかり、中国もゼロコロナ政策を終了したことで2・9%の成長率を見通す。ただインフレ率は依然高水準で、米欧とも当面は金融引き締めを継続する方針だ。新興・途上国の債務問題の行方が懸念され、中国をはじめとする主要債権国による債務再編を加速したい。
日本の22年12月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比4%上昇と、41年ぶりの上げ幅だった。日米の真逆の金融政策が円安を進行させ、輸入物価を押し上げた影響が大きい。ただ円安の要因は日米金利差だけでなく、日本の国際競争力の低さも背景にある。継続的な賃上げが可能な構造改革を押し進める好機と受け止めたい。
IMFによると、ロシアの22年の実質成長率は0・3%とプラス成長が見込まれ、22年のマイナス2・1%から回復する。中印がロシア制裁の抜け道になっているほか、インドのように中立・非同盟を貫く東南アジア諸国の多くはロシア制裁に加わっていない。ロシアが第三国から先進国の製品・部品を調達する並行輸入も行われており、ロシアは制裁下でも孤立していない。
米国が主導する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を軸に、日本はG20とも連携しつつフレンド・ショアリングをどこまで拡大し、有効に機能させられるかが今後の大きな焦点となろう。
(2023/2/24 05:00)