(2023/2/27 05:00)
ウクライナ情勢は、日本の深刻なエネルギー事情をあらためて浮き彫りにした。電力の安定供給に黄信号が灯(とも)り、価格高騰が企業と家庭のコストを大幅に引き上げた。岸田文雄政権が原子力政策を大転換し、安定供給と脱炭素、価格の安定を目指すのは現実的で適切な判断と評価できる。ただ原発の安全神話は崩れている。国民の不安を拭う丁寧な説明も政権には求められる。使用済み核燃料の最終処分地の選定も政府主導で慎重に推進してもらいたい。
岸田政権は東日本大震災以降、封印してきた原発の新増設や再稼働の推進、老朽化原発の稼働期間延長を相次ぎ表明した。ウクライナ情勢を背景にエネルギー価格は高原状態にあり、エネルギー自給率が1割強にとどまる日本は企業・家庭に節電協力を求めるほど電力事情は危うい。再生可能エネルギーを主力電源化しつつ、ベースロード電源(低コストで安定供給できる電源)として原発を最大限活用する政策転換は適切である。
新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代型原子炉の実用化は2030年代とされ、少なくともそれまでは再生エネと原発を最大限活用し、電力の安定供給体制を整える必要がある。
今通常国会には「原則40年、最長60年」とした原発の運転期間を延ばす原子炉等規制法改正案が提出される。原子力規制委員会の審査などで停止していた期間を除外することで、60年超の運転を可能にする。ただ60年超は未経験で特別な審査が求められる。このため原子力規制委員会は①具体的な審査基準②追加する検査項目③国民への分かりやすい説明―の3点を議論する。安全を最優先に、点検漏れがない確かな対策を講じ、国民の理解を得てもらいたい。
日本はロシアからの22年後半の原油輸入が前年同期比で約9割減った。だが節電要請なしに電力の安定供給を維持できない事態というのは異常だ。ウクライナ情勢の長期化を見据え、エネルギー自給率の低い日本や、今冬をどうにかしのいだ欧州は、エネルギー安保の早期構築が求められる。(この項おわり)
(2023/2/27 05:00)
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