(2023/3/22 05:00)
岸田文雄首相が21日、ウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。先進7カ国(G7)で戦火のウクライナを訪問していない首脳は岸田首相だけだったが、G7すべての首脳がウクライナの地を踏んだ意義は大きい。日本はG7議長国であり、その責務を果たした岸田首相の決断を高く評価したい。5月にはG7広島サミットを控える。G7首脳は法の支配に基づく国際秩序の堅持に向け、民主主義国の強固な結束力を世界に発信してもらいたい。
ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻後、日本を除くG7首脳は相次ぎウクライナを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談。ウクライナへの継続的な支援を表明し、ロシアのプーチン大統領をけん制してきた。今年2月にウクライナを電撃訪問したバイデン米大統領はゼレンスキー大統領に対し「ウクライナの独立と主権、領土の一体性に対する揺るぎない支持」を伝え、5億ドル(約655億円)の追加支援を表明していた。
岸田首相とゼレンスキー大統領は1月に電話会談し、大統領が岸田首相にウクライナ訪問を招請。岸田首相は「諸般の状況も踏まえ検討していきたい」と話していた。だが岸田首相はウクライナ訪問を望みながら、極秘裏での訪問は難しいとされてきた。国会会期中の首相の外遊は衆参議院運営委員会の了承が必要で、情報が漏れると首相警護が難しくなる。自衛隊による海外での要人警護も明確な規定がない。複数のハードルを乗り越えての今回の電撃訪問はG7の結束を強めたと評価できる。
岸田首相はウクライナ訪問がかなわなかった2月に同国への55億ドル(約7200億円)の追加支援を表明。それまでのウクライナ支援総額約15億ドル(約2000億円)からの大幅な増額で、支援額でG7議長国としての責務の一つを果たしていた。
日本は国連安全保障理事会の非常任理事国でもある。プーチン大統領が核兵器の使用も示唆する中、G7広島サミットでは唯一の被爆国・日本から核の脅威を世界に発信し、議長国の存在感をさらに高めてほしい。
(2023/3/22 05:00)