社説/植田日銀総裁が初会合 現状維持も6月以降の修正焦点

(2023/4/25 05:00)

日銀の植田和男総裁は27、28の両日、就任後初の金融政策決定会合に臨む。今回の会合は黒田東彦前総裁の路線を継続し、現行の金融政策を維持する見通しだ。市場関係者は次回6月会合以降に注目し、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃または許容する長期金利の上限引き上げの可能性を指摘する。米国の利上げ打ち止め観測や好調な2023年春闘を背景に、異次元金融緩和を修正するか注視したい。

植田総裁は10日の就任会見で、YCC政策と日銀当座預金のマイナス金利政策は「継続が適当」と発言しており、金融政策は現状を据え置く見通しだ。米欧の金融不安から海外経済の不確実性が増していることも背景にある。ただ植田総裁自身が指摘するように、異次元金融緩和に伴う「副作用に配慮」する必要がある。日銀の国債大量購入により、債券市場の流動性が低下している。そうした副作用の是正に動ける環境が整いつつあることに注目したい。

一つは、米国が利上げを停止する可能性があること。米連邦準備制度理事会(FRB)は5月2、3日の会合で政策金利を0・25%引き上げるのを最後に利上げを停止するとの見方が有力だ。利上げは米銀行が保有する債券の含み損を拡大させ、経営健全化に向けた慎重な融資姿勢(貸し渋り)が米国経済を冷やしかねない。米国が利上げを停止すれば、日銀がYCCを修正しても日本への急激な金利上昇圧力とはならないだろう。

日銀の6月の金融政策決定会合は15、16日に開かれる。米FRBの6月会合はそれに先立つ13、14日で、日銀は米国の利上げ停止を確認した上でYCCを修正するとの見方が多い。為替は円安が一服し、輸入インフレも是正されると期待したい。

二つ目は23年春闘での高水準の賃上げ。連合の第4回集計によると平均賃上げ率は3・69%に達した。実質賃金が増加に転じると期待され、日銀も金融緩和の修正に動きやすい。植田総裁は異次元緩和の副作用を総点検し、経済情勢に応じ臨機応変に政策を調整してもらいたい。

(2023/4/25 05:00)

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