(2023/6/2 05:00)
岸田文雄首相が今通常国会の最重要課題に掲げる「異次元の少子化対策」。だが肝心の財源は「国民の追加負担なしを目指す」(岸田首相)ものの、財源不足に陥る懸念を拭えない。衆院解散・総選挙を見据えてか、岸田政権は有権者の痛みを伴う消費増税を早々に封印し、現役世代や企業の負担増となる社会保険料の上乗せも与党内で反発が大きい。政権は国債発行に依存せず、「社会全体で子育てを支える」との基本方針に基づいた財源の確保が求められる。恒久財源となる税の活用についても排除せず審議を尽くしたい。
政府は1日、少子化対策を盛り込んだ「こども未来戦略方針」の素案を公表した。児童手当の拡充や支給対象の所得制限撤廃、第3子以降の支給額倍増、支給期間の中学から高校への延長、さらに育児休業給付金の拡充や出世払い型奨学金の導入なども盛り込まれた。結婚していない若者にとって果たして結婚・出産のインセンティブとなるのか、費用対効果を定期的に検証することも求められる。
財源が懸念される。少子化対策に集中して取り組む3カ年の「加速化プラン」には年3兆円台半ばの予算が必要。医療保険料の上乗せや社会保障分野の歳出改革などで賄う方針だったが財源に懸念を残す“見切り発車”となったのは残念だ。
恒久的な安定財源については28年度までに確保し、それまでは不足する財源をつなぎ国債「こども特例公債」で賄うという。つなぎ国債の償還財源を何に求めるのか、恒久財源とともに確かな道筋を示してほしい。
岸田政権は経済界の意見にも耳を傾けてもらいたい。社会保険料の上乗せは現役世代や企業の負担が増す。企業は防衛費増額でも法人増税を迫られる。全世代で広く負担する消費税なども選択肢に残し、税と社会保険料にベストミックスはないのかを模索してもらいたい。
防衛費増額のための増税も、時期や規模などは年末に結論を先送りしている。“二つの財源”をいかに確保するのか、財政規律を順守しつつ少子化対策と安全保障対策を推進したい。
(2023/6/2 05:00)
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