(2023/6/7 05:00)
政府が6日に閣議決定した2023年版「エネルギー白書」は、世界の深刻なエネルギー事情をあらためて浮き彫りにした。ウクライナを侵攻するロシアへの経済制裁が長期化し、世界的な「液化天然ガス(LNG)争奪戦」が懸念されると指摘。2025年頃にかけて需給はさらに逼迫(ひっぱく)すると警鐘を鳴らし、エネルギー自給率向上の必要性を訴えた。日本はLNG輸入の約1割をロシアに依存し、エネルギー全体の自給率も1割強に過ぎない。ウクライナ情勢をエネルギー安全保障の確保と脱炭素化の起点としたい。
欧州はロシアへの経済制裁に伴い、米国からのLNG輸入を拡大。LNGの生産が追いつかず、短期間では需給逼迫が終わらないとみる。ウクライナ情勢に終息の気配はなく、各国は再生可能エネルギーや原子力発電などで自給率を引き上げる必要があると指摘している。LNGが通常価格に戻るのは30年以降になる可能性もあるとしており、対策を講じておきたい。
日本のエネルギー自給率(21年度)は1割強にとどまり、企業や家庭に節電協力を求めるほど電力事情は危うい。電源構成の7割強を化石火力に依存し、原子力は7%、再エネは20%に過ぎない。再生可能エネルギーを主力電源化しつつ、安全を確認できた原発を最大限活用する岸田文雄政権の政策転換は、自給率の向上につながり、現実的で適切であると評価できる。
新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代型原子炉の実用化は30年代とされ、少なくともそれまでは再生エネと既存の原発を最大限活用し、電力の安定供給体制を整える必要があろう。
他方、使用済み核燃料の最終処分地選定については、政権が主導力を発揮してもらいたい。
日本の再エネ導入容量は世界6位ながら、国土が狭いため再エネ比率を上げるのは難しいとされる。白書は太陽電池の技術革新や洋上風力の可能性、さらに新たなクリーンエネルギーである水素・アンモニアも中長期の視点で実用化を期待しており、産業界が新エネの潜在能力を引き出すことが期待される。
(2023/6/7 05:00)
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