(2023/6/22 05:00)
第211通常国会は21日に会期末を迎え、閉会した。政府が提出した60法案(第210国会の継続案件1件を含むと61法案)のうち58法案(同59法案)が可決・成立した。成立が見送られた2法案のうち1本が「金融商品取引法改正案」。国に提出する四半期報告書を廃止し、取引所規定に基づく四半期決算短信に開示を一本化する内容。目先の利益ばかりでなく、中長期の成長投資を促すことで、企業価値を向上させる効果を期待できる。秋の召集が見込まれる臨時国会での早期成立を望む。
今通常国会は防衛費増額を裏付ける防衛財源確保法の審議が長引き、金商法改正案の成立が見送られ、継続審議となった。
四半期報告書は2006年の証券取引法改正により創設された。それまでは有価証券報告書と半期報告書の年2回の開示を原則としたが、投資家が企業情報に触れる機会を増やす目的で開示頻度を高めた。情報開示が促された一方、開示企業は事務負担が増えただけでなく、短期的な株価や株主利益に目を配りがちになる弊害も指摘される。
岸田文雄政権が「新しい資本主義」で四半期開示の見直しを決めたのは、人的投資やデジタル変革(DX)に象徴される中長期の成長投資を促すことで、構造的な賃上げを起点とする経済好循環を回すためである。一方で人的投資やサステナビリティー(持続可能性)などの非財務情報の開示を求めるのも中長期の視点で企業価値を高め、潜在成長率を高めるのが狙いだ。
経済界が賛同する四半期報告書の廃止について、岸田政権は予定通り24年4月1日から確実に具体化してもらいたい。
金融審議会が22年末にまとめた報告によると、当面は四半期決算短信を一律に義務付けるものの今後、適時開示の充実の状況などを見ながら「任意化」について継続的に検討するとした。企業は目先の株価や株主還元にとどまらず、従業員や取引先などのステークホルダー(利害関係者)にも目配りしたコーポレートガバナンス(企業統治)が求められる。任意化の可能性も審議を深めていきたい。
(2023/6/22 05:00)