社説/中国経済 “息切れ” デフレ懸念、世界への波及警戒

(2023/6/23 05:00)

中国経済の息切れが鮮明だ。「ゼロコロナ政策」解除後も景気の足取りは鈍く、5月の経済指標は停滞を裏付ける。中国人民銀行は10カ月ぶりの利下げを決め、景気への警戒感を強める。デフレ懸念も指摘され、世界経済への影響が危惧される。中国が世界経済をけん引するとの年初の期待は一転した。利下げに続く今後の景気対策の行方や、欧州との経済関係強化に動く中国の動向を注視したい。

中国の5月の工業生産は上海市がロックダウン(都市封鎖)されていた前年同月との比較で3・5%の増加にとどまる。同月の消費者物価指数は前年同月比0・2%の上昇とほぼ横ばいで、デフレ懸念さえ出始めた。国内総生産(GDP)の3割を占める不動産関連も、1―5月の不動産開発投資は前年同期比7・2%減と低迷が続く。

5月の16―24歳の失業率は過去最悪の20・8%に達し消費マインドも冷える。内需に期待する中国にとっては厳しい経済指標と言わざるを得ない。

中国人民銀行は20日、景気刺激策として、最優遇貸出金利(LPR)1年物と住宅ローン金利5年物LPRをそれぞれ0・1%引き下げた。効果は限定的とされ、今後の景気対策が注目されるが、習近平国家主席は不動産投機を抑制しているだけに、大規模対策を講じにくい。

習政権の政策が経済の足かせとなり、コロナ禍からのV字回復を難しくさせている。格差是正に向けて民間企業を規制する「共同富裕」とゼロコロナ政策が不動産市況の大幅悪化など内需を想定以上に減退させた。加えて世界経済の減速が中国の輸出を鈍らせ、保守的な5%前後の成長目標も高く見える。

中国が米国務長官を招いた一連の会談も、20日のドイツ首相らとの政府間協議も、狙いは「経済」だ。米国の対中輸出規制の緩和、欧州との経済協力の強化を模索する。西側諸国は経済安全保障への目配りを忘れず、中国とは安保以外で関係を強化したい。加えて中国がロシアに停戦を働きかける仲介役となるよう促し続ける外交も、この機に推進してもらいたい。

(2023/6/23 05:00)

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