社説/概算要求110兆円超 歳出構造「平時」に戻せるのか

(2023/8/28 05:00)

各省庁による2024年度予算の概算要求総額が110兆円を超える見通しだ。要求段階での110兆円超は3年連続になる。経済活動がコロナ禍から正常化に向かう中、政府は6月に決めた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で「歳出構造を平時に戻していく」方針を盛り込んでいた。コロナ下で野放図だった歳出構造を是正できるのか、概算要求を見る限り先行きが懸念される。

概算要求は月末に締め切られる。防衛費が23年度当初予算比1兆円近く多い7・7兆円程度に増えたほか、金利上昇に伴い国債費が同2・9兆円程度多い過去最大の28兆円超に達する。日銀が許容する長期金利の上限を上げたためだ。高齢化により厚生労働省の要求も同5900億円程度多い約33・7兆円に達し、要求総額を押し上げた。

各省庁の要求に歯止めをかけるはずの概算要求基準が形骸化している点が懸念される。少子化対策や物価高対策は、要求段階で金額を示さない事項要求が認められ、政権の「新しい資本主義」には4・2兆円の特別枠を設けた。特別枠は裁量的経費を1割削減すれば、削減額の3倍まで要求可能だ。構造的賃上げや官民連携の投資拡大などを促す上で、特別枠は重要な役割を担うが、各省庁の歳出圧力も強めてしまったのではないか。

岸田文雄首相は歳出削減により少子化対策の財源を確保すると表明したが先行きが心配だ。

岸田政権はコロナ禍下で大規模な財政出動に動いていた。当初予算と補正予算を合わせた決算を見ると、20―22年度は139兆―147兆円台に達した。コロナ禍や物価高に対応した緊急の大型補正予算の編成はやむを得ない。ただ22年度決算は使い切れずに23年度予算に繰り越した額が約18兆円、使う必要がなくなった不用額が11・3兆円にも達した。こうした見積もりの甘い歳出構造は直ちに是正し、平時モードに戻したい。

岸田首相は9月に物価高対策を盛り込んだ経済対策の策定も検討する。不要不急の予算項目が補正予算案に含まれないか、財政規律の観点で注視したい。

(2023/8/28 05:00)

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