(2023/9/13 05:00)
インボイス(適格請求書)制度が10月1日に導入される。最も不安を募らせるのが売上高1000万円以下の小規模事業者だ。現在は消費税の納税義務を負わない免税事業者だが、インボイスを発行するには課税事業者になる必要があり、新たな税負担が発生する。免税事業者を継続する道もあるが、取引先の負担がその分増えるため取引を停止されかねない。政府は月内にまとめる経済対策も含め、不安解消へ万全を期してほしい。
インボイス制度の導入により売り手は買い手に発行するインボイスに消費税の税率(8%または10%)や税額、さらにインボイス制度の登録番号を記す必要がある。インボイスがないと「仕入れ税額控除」を受けられない点が最大の特徴で、小規模事業者の懸念はそこにある。
仕入れ税額控除は、企業が売り上げによって得た消費税額から、仕入れの際に払った消費税額を差し引くこと。例えば660円(うち消費税60円)で製品を仕入れ、1100円(うち消費税100円)で販売すると、消費税の納税額は差し引き40円になる。だが、インボイスがない免税事業者からの仕入れでは納税額が100円になる。
免税事業者が課税事業者となれば税負担で利益が減る。免税事業者を続ければ取引停止や取引価格の値下げを迫られかねない。取引価格の一方的値下げは独占禁止法に抵触しかねず、政府には十分な監視を求めたい。
政府はインボイス制度の円滑な導入に向けて経過措置を講じる。向こう3年間は、免税事業者からの仕入れでも消費税相当額の8割が仕入れ税額控除の対象となり、免税事業者が課税事業者に転じても消費税納税額が本来の2割で済む。補助金もあり、同制度を事務のデジタル化を進める機会とも捉えたい。
政府は月内に策定する経済対策で必要な支援策をまとめる。財務省によると、インボイス制度の登録が見込まれる約160万の免税事業者のうち、8月末までの申請は103万件で、3分の1が未申請。小規模事業者が不利益を被らない対策を講じ、円滑な導入を実現したい。
(2023/9/13 05:00)
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