社説/米議会の機能不全 世界の安保確保へ議会正常化を

(2023/10/12 05:00)

米議会の機能不全は、世界の安全保障と経済に多大な影響を及ぼす。米国の新会計年度(2023年10月―24年9月)の政府予算案さえ可決・成立のめどが立っていない。ウクライナとイスラエルへの軍事支援は米軍在庫の供与にとどまり、新たな支援には議会承認が必要になる。米国財政への信認低下が長期金利の上昇圧力となれば世界経済も混乱しかねない。米議会の早期正常化、さらに米中首脳会談の実現により地政学的リスクの拡散に歯止めをかけたい。

世界の安全保障が複数の地域で脅かされている。覇権主義的な動きを強める中国ばかりでなく、ロシアによるウクライナ侵略、さらにイスラム組織ハマスとイスラエルの大規模な軍事衝突が発生した。米国は中国をけん制しつつ、ウクライナとイスラエルへの軍事支援をいかに継続するのか、バイデン米政権は難しい政策運営を迫られる。

米議会は、超党派で世界の安全保障を確保するという重責を再認識してもらいたい。上下両院の“ねじれ議会”の混乱は、初の下院議長解任に発展し、ようやく成立した「つなぎ予算」からはウクライナ支援が除外された。米議会が下院議長の速やかな選任と予算成立を実現できるかが当面の焦点になる。

財政健全化を重視する共和党の保守強硬派の言動が懸念されるものの、ウクライナへの最大の支援国である米国はイスラエルへの軍事支援も含め、超党派で結束することが求められる。

イランがハマスの攻撃に関与していれば、イスラエルとイランが対立し中東情勢は一気に緊迫化する。米国は存在感をさらに高める対応を迫られよう。

米国はウクライナと中東に目配りする間、中国との緊張は緩和したい。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた米中首脳会議が模索されている。これを実現し、中国との対話を継続しつつ二つの戦争に向き合いたい。

国際通貨基金(IMF)は24年の世界の実質成長率が2・9%に停滞すると予測する。地政学的リスクの長期化が大幅な下方修正を迫るかを注視したい。

(2023/10/12 05:00)

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