(2023/11/8 05:00)
長期金利(新発10年物国債)が約10年ぶりに0・8%台後半まで上昇し、メガバンクや信託銀行が定期預金金利の引き上げに動き出した。日銀による金利操作の再修正を契機に、超低金利時代に終止符が打たれ、“金利のある世界”に戻るのか今後の動向が注目される。ただ最近の金利上昇は、米国の長期金利につられて上昇したものだ。賃上げを起点に、資金需要の拡大と金利上昇を実現する好循環を早期に回すことが求められる。
三菱UFJ銀行は6日、一律0・002%だった期間5―10年の定期預金金利を引き上げ、期間10年は0・2%とした。100万円を1年預けた利息が20円から2000円になる。三菱UFJ信託銀行と三井住友信託銀行も5年定期金利を0・002%から0・07%に引き上げた。他行の追随も想定される。
まだまだ超低金利だが、各行は今後の金利上昇を見据え、利子収入を追う預金者の確保に動き出したとみられる。一方で企業向け融資や住宅ローンの金利上昇も見込まれ、銀行の収益基盤の強化が期待される。“金利のある世界”と形容できる環境はいつ整うのか、日銀の金融政策の行方を注視したい。
日銀は10月末にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を再修正し、長期金利が1%を一定程度超えることを容認した。1%としていた長期金利の上限を「1%をめど」に緩め、定期預金金利の引き上げにつながった。ただ異次元金融緩和の枠組みは維持されたままだ。日銀が金融政策の正常化に向け、24年春以降にYCCやマイナス金利政策を解除できるかが大きな焦点になる。
日銀の植田和男総裁は6日の会見で、金融正常化の前提となる物価2%目標の達成は確度が上がっているとし、24年春闘による後押しに期待を示した。連合は同春闘で5%以上の賃上げ目標を掲げ、経団連との共闘が期待される。ただ金融政策の正常化が実現した場合、企業の資金調達コストも引き上がる。企業は成長投資などを通じ、コストを吸収できる収益基盤に強化しておくことも肝要になる。
(2023/11/8 05:00)
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