社説/外形課税の適用拡大 赤字中小に影響が及ばぬ改正を

(2023/11/9 05:00)

「外形標準課税」の適用対象を拡大する議論が、総務省の有識者会議で行われている。現行は、資本金1億円以下の中小企業は対象外だが、大企業が税逃れのため資本金を1億円以下に減資する事例が相次いでいることを問題視し、これら大企業を課税対象に加える狙いだ。問題意識は適切だが、有識者会議が示す改正案では、資本金1億円以下の赤字中小企業も対象に加わる可能性がある。影響は甚大であり、慎重な議論を求める。

外形標準課税は、企業が都道府県に納める法人事業税の課税方式の一つで、資本金1億円超の企業なら赤字企業でも納税義務がある。人件費や従業員数など企業規模を示す「外形」に課税する制度で、赤字企業も行政サービスの費用を公平に負担すべきとの考えが背景にある。

東京商工リサーチの調査によると、2023年3月末までの1年間で資本金を1億円超から1億円以下に減資した企業は1235社に達し、前年比で3割近くも増えた。同調査では黒字企業が急増しており、赤字補填でなく税逃れの減資の可能性がある。こうした税逃れは税負担の公平性や税収の安定確保の観点から是正が求められ、外形標準課税制度の改正は必要だ。

ただ、総務省の有識者会議が示した改正案には懸念が残る。改正案では、現行の資本金に資本剰余金を加えた額を判断基準とする考え方などが示された。節税目的で減資する企業は、資本金を資本剰余金に振り向けているとみる。節税目的の大企業を課税対象とする所期の目的が拡大され、赤字の中小企業にも影響が及ばないよう、丁寧な制度設計が求められる。

日本商工会議所は、賃金への課税が中心である外形標準課税の適用拡大は「喫緊の課題である賃上げの取り組みに逆行する」とし、赤字企業への「影響は甚大で断固反対する」と強く反発する。経団連も「丁寧に実態を分析した上で対応策を検討すべきだ」と慎重姿勢を示す。年末に24年度税制改正の具体策を詰める与党税制調査会は、岸田文雄政権の政策と整合性を保った改正案に仕上げてほしい。

(2023/11/9 05:00)

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