(2023/11/17 12:00)
アミュラポ(東京都新宿区、田中克明最高経営責任者〈CEO〉)は仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術と宇宙産業の経験をかけ合わせた独自のノウハウを生かし、企業向けの研究開発支援や宇宙体験コンテンツの制作を手がける。コンテンツの拡充や全国展開、企業向け支援ソフトウエアの開発に着手しており「火星に100万人規模の都市がある」時代に向けた礎となることを目指す。
当時アイスペースにエンジニアとして所属していた田中CEOが中心となり、2020年2月に設立したベンチャー企業。現在は科学体験コンテンツ制作や研究開発支援などBツーB(企業間)の受託開発業務が売上高の9割超を占める。
鳥取砂丘(鳥取市)の砂場を月面に見立て宇宙開発の実証フィールドとする鳥取県のプロジェクトに携わり「ルナテラス」として7月に開設された。田中CEOは「鳥取砂丘は広大で砂粒が均質。月面を想定した実証に適している」と説明する。現在は利用する企業を募る段階で「数十団体と意見交換している」という。
自社提供する支援ソフトウエア開発も行う。VR・ARなど映像技術を使い、宇宙機器開発の進捗(しんちょく)を社内外で可視化・分析する。来春にも取引先企業向けにプレリリースし、研究開発を加速する。3Dモデルで作業内容を共有するため、チーム間でプロジェクトへの理解が深まる。納入先や投資家とのコミュニケーションツールとしての利用も見込む。
ソフトウエアには統合シミュレーターの機能を持たせ宇宙空間の重力や温度、放射線量など特定の条件下での稼働を検証する。宇宙機器の評価・運用まで使えるものを目指す。
自社の宇宙体験コンテンツでは小学生高学年向けの「バーチャル宇宙飛行士選抜試験」や、リアルの鳥取砂丘が月面都市に変貌する「月面極地探査実験A」を開発した。現状、自社コンテンツのみで収益が成り立たない状況だが「宇宙産業の裾野を広げたい」思いで実施。今後、BツーBの自社コンテンツを推進することで収益化できる見通しという。
リアルでのコンテンツも造成する。長野県原村の「八ヶ岳高原テラス」で宇宙空間が体験できる「宇宙ホテル」の開発を進めており、23年7月にプレオープンした。星空観測や食事、住環境など宇宙体験アクティビティを提供する。社会実験フィールドとしての機能を持たせ、宇宙開発支援につなげる。建屋の建設を含め27年の完成を見込む。
同社設立のきっかけは17―18年に日本HP社の国際アイデアコンテストで最優秀賞を獲得し「VRと宇宙をかけ合わせる良さを知り、自分たちで事業化しようと考えた」(田中CEO)こと。同コンテストの課題は「100万人が火星に住む時代をデザインすること」だった。田中CEOは「社会的な意義があることを自分たちでしっかりやれる会社にしたい。遠い未来の宇宙開発にもつながれば」と展望を語る。
(2023/11/17 12:00)
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