データを見る大切さに気付いた『「公益」資本主義』 三洋化成工業会長・安藤孝夫氏

(2023/11/17 12:00)

「会社は株主のもの」という考え方に、私は反対だ。増配するお金があれば従業員の処遇を改善し、将来の設備・技術開発投資へ振り向けるべきだ。長期的視点で考える。従業員のモチベーションとパフォーマンスが上がり会社が成長し、結果として株主への還元もできるのではないか。

「マネーゲームに回る資金を中長期投資へと導くことこそ『公益資本主義』が目指す成長戦略」と説く、原丈人氏の『「公益」資本主義』を以前に読んだ。その後2021年頃に友人の紹介で原氏にお会いする機会があり、失礼とは思いながら初対面で私の考えが原氏の考えと似ていることを思わず伝えてしまった。

とかく日本人は世間に流されデータを見ない傾向にある。原氏は小さな枠組みで見ず俯瞰(ふかん)して見て、世間に流されない考え方ができるところがすごい。原氏は、香港中文大学や香港大など世界トップ級の研究開発機関があり、欧米の有名大学も研究所設立を公表していることなどから「香港は今後劇的に繁栄する」と見ている。実際に米国企業は香港に多く集まる一方、日本人は中国の影響力が強いとみて恐れる風潮にある。

広い視点で見て、そうそうたる企業に投資し、著者が設立したベンチャーキャピタルも大きくなっている。私もデータで見ることの大切さを改めて考えさせられた。

商売繁盛の指南書で、道義を伴った利益を追求すること、また公益を大事にすることを記した渋沢栄一著『論語と算盤』も好きな一冊。小手先のテクニックだけで業績を伸ばそうとするのではなく、誠実さなどの人格を磨くことが成功への道と説いたスティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』にも影響を受けた。

私の考えとは異なる本も読む。マキャベリ著『君主論』は政治と倫理を切り離して考え、権力を取るためにリーダーが冷酷であることも重要と書かれている。やっぱり私は渋沢栄一の考えの方が好きだ。

(2023/11/17 12:00)

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