社説/EV補助金制度見直し 新評価基準でGX市場の整備を

(2023/12/8 05:00)

経済産業省は、電気自動車(EV)などエコカーの購入に支給する補助金制度を見直す。現行は車両の性能・機能で補助金額を設定しているが、新たに充電器の設置数や修理・整備体制、バッテリー回収の取り組みなども補助金の算定基準に加える方針だ。EVを安心して購入できる体制整備を完成車メーカーに促すことで、エコカーの普及を後押しし、車のライフサイクル全体の環境負荷の低減も進める。脱炭素と産業成長を両立する施策として期待される。

経産省は11月末に開いた産業構造審議会(経産相の諮問機関)で、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」制度の新たな算出基準案を示した。制度は年末から2024年1月に決め、補助額の設定や申請受け付けは同3月からを予定する。

経産省は補助金の新たな算定基準として、電費(ガソリン車の燃費)・航続距離などの車両性能のほか、充電・水素インフラ整備への貢献や修理・整備拠点数、バッテリー回収などリユース・リサイクルへの貢献、車のライフサイクルを通じた二酸化炭素(CO2)削減目標などの9項目を想定している。

現行の補助金上限はEVが65万円で、電費や外部給電性能の有無で最大85万円まで。新制度はメーカーによるインフラ整備や脱炭素の取り組みも評価し、同種類の車でもメーカーで補助額に差が出る可能性がある。競争原理により、EV化の環境整備に弾みが付くと期待したい。

経産省によると、足元のEV販売比率は世界全体が11%に対し、日本はわずか2%。中国の21%、英仏独の15%に見劣りする。北米は6%だが、北米生産の電動車に税額控除を講じるなどEV化を強力に後押しする。

日本は脱炭素に向け、35年に乗用車の新車販売で電動車100%を目指す。電動車の生産から利用、リサイクル・廃棄までのグリーン・トランスフォーメーション(GX)市場を整備しつつ、全固体電池の実用化・量産技術などで世界をリードしたい。今回の制度改正を脱炭素の推進とEV市場での巻き返しを図る起点と位置付けたい。

(2023/12/8 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン