ダイセキ、アンモニアの循環利用 視野に 不純物除きガス回収

(2023/12/22 12:00)

ダイセキは名古屋大学発ベンチャーのSyncMOF(シンクモフ、名古屋市千種区、畠岡潤一社長)とサーキュラーエコノミー(循環経済)型アンモニアリサイクルに関する共同研究を進めている。新規吸脱着剤を使い、排ガス中のアンモニアのみを吸着、回収する技術にめどをつけた。回収したアンモニアを再び製造工程に戻す仕組みづくりを視野に入れ、アンモニアの循環利用の実現に向けて一歩を踏み出した。

  • ダイセキが導入したアンモニア回収の試験装置

アンモニアは肥料や樹脂などの原料以外に、二酸化炭素(CO2)を排出しない燃料として期待が高い。アンモニア混焼による石炭火力発電など活用法の検討が始まっている。

アンモニアの循環利用のハードルは、まだ高いのが現状だ。アンモニアガスは不純物が含まれていると再利用が難しい。多くはスクラバー(排ガス処理装置)でアンモニアと不純物を回収し、無害化して廃棄物として焼却処理している。

工場廃液のリサイクルを行うダイセキでは廃液中のアンモニアをガス化して回収し、活性汚泥用栄養剤としてリサイクルしている。しかし、アンモニア廃液は難処理物に分類され、近年は排出量が増加傾向にあるため処理と活用が課題だ。

ダイセキがシンクモフと共同開発する吸脱着剤「Amunite」は、不純物を含むガスからアンモニアガスだけを吸着、回収できる。シンクモフが開発した気体を選択的に回収、貯蔵できる金属有機構造体(MOF)の特徴を生かしている。

MOFは金属イオンと有機配位子によるジャングルジムのような構造。活性炭などの多孔質材料と比べても大きな比表面積を持つ。材料の種類、骨格の大きさなどの組み合わせによって親水・疎水性、孔径など性質を変えられるのが特徴だ。

Amuniteは0・26ナノ―0・29ナノメートルの空間を設計。室温で脱離可能で、アンモニアガスの濃度が高いと吸着し、低いと放出する性質を持つ。「エネルギー負荷の低いアンモニアリサイクルへの貢献が期待できる」(西田和也事業統括本部生産技術開発部長代理)との感触を得ている。

国内のアンモニア消費量は年間100万トンを超える。半導体製造でのシリコンウエハー表面のRCA洗浄のほか、政府のカーボンニュートラルポートの取り組みなどもあり、将来的に使用量の増加が予想できる。

Amuniteは既存の脱臭棟の配管途中に設置し、アンモニアガスを吸収、回収する使い方を想定する。アンモニアガス中の不純物の種類、使用場所などは多種多様であり「使用状況に応じた材料として提供することになるだろう」(三輪尚人同本部生産技術開発部技師)と見通す。

今後はダイセキの処理工場のほか、廃液や排ガスを排出する企業での試験も検討していく。さらに「回収したアンモニアに対する理解を促し、いかに利用を促進するかもテーマになる」(西田氏)と見据え、アンモニア循環社会という理想に向けて前進を続ける。

(2023/12/22 12:00)

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