社説/「株価を意識した経営」 PBR改善は「成長投資」重視で

(2024/1/23 05:00)

「資本コストと株価を意識した経営」が足元の株高を支えているとの指摘がある。株価純資産倍率(PBR)を向上させる自社株買いなどを海外投資家が好感しているという。株価の上昇は歓迎だが、目先の株価や株主利益に過度に目配りしていないか懸念が残る。中長期の価値創造や事業の選択・集中を推進し、持続的な成長でPBRを向上させる視点も併せ持ちたい。

足元の国内の株高は、米国の堅調な株価や円安、日本企業の好業績などが背景にある。米国は半導体を中心にハイテク株が買われ、米国の堅調な経済指標から早期の利下げ観測が後退し円安基調にある。バブル崩壊前の最高値を更新するとの指摘もあり、続伸が期待される。

他方、東京証券取引所が2023年3月末に上場企業に要請した取り組みも、株高に一因しているとされる。東証は「資本コストや株価を意識した経営の実現」を上場企業に求め、PBRが1倍を割る企業に資本効率の改善と改善策の開示を促している。23年12月末時点ではプライム市場に上場する59%(検討中を含む)の企業が改善策を開示し、同年7月時点の31%から2倍近く増えた。企業の意識が徐々に変化しているようだ。

ただPBRの改善に向け、資本コストを上回る収益率を確保するには事業競争力を強化する必要があり、中長期の成長投資こそ推進したい。東証の趣旨と異なり、短期的なPBR改善を目指した自社株買いなどで数字合わせをしていないか懸念される。23年の自社株買いは約9・4兆円(SMBC日興証券調べ)と過去最高を更新し、24年も高水準が予想されている。

岸田文雄政権の「新しい資本主義」は中長期の成長投資を促し、24年度から国に提出する四半期報告書も廃止する。短期的な株価や株主利益に目を配りがちになる弊害を是正する。成長投資により構造的な賃上げを起点とする経済好循環を回したい。企業は株主のみならず従業員や取引先など多様なステークホルダー(利害関係者)に配慮したコーポレートガバナンス(企業統治)を実現してほしい。

(2024/1/23 05:00)

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