社説/経済界4年ぶり訪中団 環境改善へ一歩、対話の継続を

(2024/1/29 05:00)

経済界の訪中代表団が23―26日の日程で北京を訪問し、25日に中国の李強首相と会談した。代表団は李首相に対し、改正反スパイ法の施行で脅かされるビジネス環境や、日本産水産物の輸入禁止、日本への短期滞在ビザ(査証)の免除停止について改善を求めた。李首相はビジネス上の環境改善に鋭意取り組むと応じた。一定の成果を上げたと評価したい。日中は両国の意見の隔たりを埋める対話を継続し、互恵関係を模索したい。

日中経済協会と経団連、日本商工会議所の代表らが訪中した。経済界の訪中は4年ぶり。中国の首相と対面し、経済界の懸念を直接伝えたこと自体に大きな意味がある。2023年の日中首脳会談で、両国は意思疎通を重ねることで一致した。経済界も中国との対話を進め、日中間の緊張緩和につなげたい。

李首相は今回の会談で「両国の関係、各分野の協力を推進していくことが重要だ」と語り、経団連の十倉雅和会長は「ビジネス環境の改善について(李首相から)鋭意取り組むという力強い話があった」と中国側の対応を一定程度評価している。ただ各論では中国側が踏み込んでおらず、今回の会談は課題解消への第一歩と位置付けたい。

23年7月施行の改正反スパイ法は、どのような行為が違法かが不明で、日本企業のビジネス環境を脅かす。透明性ある法運用が求められる。また東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出に伴い、中国政府が講じる日本産水産物の輸入禁止も、訪中代表団は科学的根拠に基づく対応を李首相に求めた。だがいずれの問題も具体的な進展はみられず、今後に課題が残る。

日中間にはビザ申請をめぐる摩擦もある。中国はゼロコロナ政策終了後、停止していた短期滞在ビザ免除を再開したが、日本は停止されたままだ。日本は短期滞在の中国人にビザ取得を求めており、李首相は日本もビザ免除を対等に行うよう求めた。だが中国は、日本と同じ措置を講じるシンガポールにはビザを免除している。中国は日本との不毛な議論に終止符を打ち、ビジネス交流を促したい。

(2024/1/29 05:00)

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