(2024/2/14 12:00)
サプライチェーン(供給網)上のあらゆる活動には値札が付いている。それらをいかに把握すべきか。サプライチェーン・マネジメント(SCM)の観点より考察してみたい。
サプライチェーンに参加する企業がサプライヤーとして享受した価値は比較的把握しやすい。諸活動に投じた資本に対して得られた利益の多寡による概算、いわゆる投資対効果(ROI)や投下資本利益率(ROIC)といった資本効率指標を用いるのが簡便だ。
他方、カスタマーとして享受した価値の内容の解像度を上げるには少々コツが要る。定石はモノ=製品自体によって形成された価値と、サービス=モノの届き方によって形成された価値とに整理して把握するアプローチだ。
これらのうち、モノの届き方によって形成された価値を測るSCM指標には「信頼性」「応答性」「敏捷(びんしょう)性」がある。特に「信頼性」の出番は多い。その筆頭サブ評価指標とされるのが「パーフェクトオーダー率(PO率)」である。当事者間で合意された納入条件(種類・数量・タイミング・品質・場所・相手・コスト)と実績との合致率を評価する。一般的には合致率が高いほどカスタマーとして得る価値が大きくなる。
注目されるのは2月に米国小売り最大手のウォルマートがパーフェクトオーダー要件を緩和したとのニュースだ。同社は従来サプライヤーに対してOTIF、すなわち「納期通り(On―Time、OT)」に「全量を(In―Full、IF)」納入する水準として98%の達成率を求めてきた。これをOT=90%、IF=95%に緩和したという(フォーブス)。
上記の前提としてサプライヤーには目標PO率からの乖離(かいり)に応じた金銭的なペナルティーが課されている。従来ならばこれを回避するための在庫保持コストとの衡量によってサービスの値札は決まる。しかし、いずれの負担も過大である場合は取引自体から離脱する誘因となる。このように捉えた場合、ウォルマートの行動はカスタマーとしてサプライチェーン自体を維持するコストを負担するものと解釈し得るだろう。需給双方の環境変容が常態化した昨今、このようなSCM上の要素にもしっかりと値札が付いていることに留意したい。
◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当
(2024/2/14 12:00)
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