(2024/4/9 05:00)
2024年春季労使交渉(春闘)が好調に推移している。連合がまとめた第3回回答集計では、定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)を合わせた正社員の賃上げ率(加重平均)が5・24%と33年ぶりの高水準を維持した。焦点である中小組合や非正規雇用者の賃上げ率も高水準にあり、賃上げを起点とした経済好循環が回り始めると期待したい。懸念は労働組合を持たない事業者の動向だ。春闘の勢いが波及するか注視したい。
連合によると、300人未満の中小組合の賃上げ率は4・69%と第2回回答集計の4・5%から上方修正され、非正規(有期・短時間・契約等労働者)も月給で6・18%と一般組合員を上回る伸び率を示した。中小組合が健闘し、非正規の処遇改善も進むものと評価したい。
ベアと定昇を区別できる2159組合のベアは3・63%、うち中小組合は3・21%と、いずれも集計を開始した15年以降で最も高い伸び率を示している。2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率2・8%を上回っており、実質賃金が増加に転じることが期待される。
連合が公表した第3回回答集計は2620組合によるもので全体のほぼ半数。全組合の最終集計まで高水準の賃上げ率を維持できるかは、中小企業の回答結果に大きく左右される。中小企業は収益が厳しい状況でも、人材の確保とつなぎ留めのための「防衛的賃上げ」を余儀なくされている。賃上げ分を取引価格に上乗せする価格転嫁の実現に向け、親事業者には全面的な理解と協力が求められる。
労働組合がない中小・小規模事業者の賃上げの行方が気がかりだ。厚生労働省の23年「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると平均賃上げ率は3・2%で、同年の連合ベースの賃上げ率3・58%(中小組合は3・23%)と大差がない。厚労省調査に回答した企業1901社の約8割は労組を持たない企業とみられ、24年もこれら企業が意欲的な賃上げに動くと期待したい。構造的な人材難が深刻化しており、一方で生産性向上の取り組みも推進してもらいたい。
(2024/4/9 05:00)
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