産業春秋／「熊本新時代」を新トップに託す

半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ）の工場建設で全国的に注目された熊本県。県政トップを史上最長の４期１６年担った蒲島郁夫知事が１５日、任期満了で退任する。

政府は経済安全保障の観点で半導体のサプライチェーン（供給網）を強化中で、最大計１兆２０００億円規模を助成する熊本工場はその中核だ。熊本県菊陽町のＴＳＭＣ工場を６日に視察した岸田文雄首相を出迎えた蒲島氏が中心となり、県内の経済効果の波及に汗をかいてきた。

「創造的復興」を掲げた。２０１６年４月の熊本地震で大きな被害を受け、同年６月に設置した県の復旧・復興本部会議も５日に終了し、今後の発展に向けて一定の役目を果たした。

ＴＳＭＣ工場とともに熊本の象徴になったのが、蒲島氏の就任２年後の１０年に誕生したＰＲマスコットキャラクター「くまモン」。国内では県から許諾を得れば無料利用できるため、全国区の人気に。

１６日に新知事に就くのは、東大教授だった蒲島氏のゼミで薫陶を受けた木村敬氏。東京都出身だが２０年から副知事を務めるなど「肥後もっこす」の心意気は十分だ。蒲島県政の良い流れを継承しつつ、熊本の新時代を創造してほしい。