社説/株価4万1000円超 実体経済との乖離に大きな懸念

(2024/7/8 05:00)

株価と実体経済の乖離(かいり)が著しい。5日の東京株式市場の日経平均株価は一時、4万1000円を超え、取引時間中の史上最高値を更新した。一方で中小企業の業況が悪化しているほか、家計の実質賃金は2年以上も前年の実績を下回る。株高は歓迎だが、同時にこれらの乖離も埋める必要がある。日本経済を早期に成長型のステージに移行させ、個人消費の拡大を起点とした経済の好循環を回したい。

4日には、日経平均株価の10倍近い銘柄で構成する東証株価指数(TOPIX)も終値で約35年ぶりに史上最高値を更新しており、株式市場は真のバブル期超えを果たしたとされる。だが複数の課題も浮かび上がる。

株高要因の一つは、歴史的な円安だ。輸出主導の上場企業への業績改善期待が株価を押し上げる。一方、円安は物価高を招き、内需依存の中小企業や家計を直撃する。日本商工会議所によると6月の業況DIはマイナス16・2と、前月比4・8ポイント悪化。実質賃金は4月まで25カ月連続で前年を下回り、節約志向が長引いているのが気がかりだ。

上場企業が「株価を意識した経営」を実践し、自社株買いなどの株主還元を進めたことも海外投資家から評価を受ける。だが2024年3月期決算で過去最高益を更新する中、賃上げは実施したものの、中小企業への価格転嫁が十分に行われていない。取引先を含む多様な利害関係者への目配りが求められる。

他方、米国の弱い経済指標が利下げ観測を呼び、米株高が日本株に波及した側面もある。中国により厳しいトランプ前大統領の再選を視野に、中国から日本へ資金も移行しつつある。だが自国第一の「もしトラ」は国際秩序と自由貿易を脅かす。

株高や上場企業の収益増が必ずしも日本経済の成長に寄与するわけではない。円安を追い風に拡大した海外拠点の利益(第1次所得収支)は株価に反映されても、国内総生産(GDP)に計上されないことに留意したい。株価に一喜一憂せず、国内での積極的な成長投資と持続的賃上げを進め、株価に見合う経済を築くことこそ重視したい。

(2024/7/8 05:00)

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