社説/南海トラフ巨大地震注意 「その日」への備え全国で加速を

(2024/8/12 05:00)

宮崎県日南市でマグニチュード(M)7・1の地震が8日、観測された。気象庁は同日、「南海トラフ地震臨時情報」を発表し、関東から九州にかけて、今後1週間は巨大地震に注意するよう呼びかけている。避難を伴わない注意喚起だが、南海トラフ地震に限らず、巨大地震はいつ、どこで発生してもおかしくないと再認識したい。企業や家庭はこれまでの震災を教訓に、でき得る対策を講じてきたのか、全国規模で確認する必要がある。

南海トラフ地震臨時情報は、M8クラスの地震が指定地域で発生すれば「警戒」、M7以上8未満なら住民に「注意」喚起する。「警戒」は1週間の避難継続など、「注意」は避難の必要がなく、家族との安否確認方法の確認や家具の固定などの対策を求める。巨大地震が発生する確率は平時より高まったものの、1週間以内に起きるとは限らない。必要最低限の対策は講じ、冷静に対応することが求められる。

地震臨時情報の仕組みを知らなかった住民も少なくない。気象庁の今回の発表で認知度が高まり、これからは戸惑うことなく対応できると期待したい。

岸田文雄首相は、9―12日の日程で予定していた中央アジア5カ国への訪問を取りやめた。南海トラフ地震臨時情報を受けての判断で、適切な対応だ。東日本大震災の2日前にM7の地震が発生していたこともあり、政府としてはあるゆる局面を想定しておく必要がある。

政府は、南海トラフ地震の被害想定を年内にも見直し、現行の「防災対策推進基本計画」を改定する予定だ。計画の策定から10年たつためで、これまでの防災対策の進捗(しんちょく)を確認し、新たな防災目標を設定するという。巨大地震への当面のリスクが無事に回避され、これまで以上に効果的な防災対策が講じられると期待したい。新たに策定する基本計画は、能登半島地震で問題となった孤立住宅の問題なども含め、被害を最小限に抑える計画に仕上げてもらいたい。政府は首都直下地震の想定被害と基本計画も見直す予定で、全国規模で対策を強化したい。

(2024/8/12 05:00)

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