社説/能登の記録的豪雨 「強靱化」検証し防災対策さらに

(2024/9/24 05:00)

能登半島地震の被災地が、記録的な豪雨に見舞われた。震災に続く豪雨の「複合災害」により、被災地の復旧・復興への歩みが遅れないか懸念される。政府・自治体は、まずは豪雨からの復旧と被災者支援に全力を尽くし、能登復興への取り組みを早期に再開したい。豪雨による甚大な被害は、一方で防災・減災対策の重要性をあらためて示した。足元の国土強靱(きょうじん)化計画を検証し、国民の生命と暮らしを守る確かな対策を講じたい。

21日に石川県で線状降水帯が発生し輪島市、珠洲市、能登町に大雨特別警報が発表された。輪島と珠洲は観測史上、最大の雨量を記録。各地で河川氾濫と土砂崩れが相次ぎ、死者・行方不明者も出ている。22日16時時点で、孤立集落が115カ所、1000人超が避難所に身を寄せた。寸断された道路などの復旧に加え、被災者に寄り添ったきめ細かな支援を進めたい。

能登半島地震により地盤が緩んだことで、土砂崩れなどの災害が通常より誘発された可能性が指摘されている。今回の豪雨被害を教訓に、複合災害リスクも今後は想定する必要がある。

政府は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を推進中だ。気候変動に伴う気象災害の激甚化、大規模地震の発生、老朽化インフラへの対策は急務である。計15兆円の予算を投じる加速化対策は2025年度が最終年度となる。これまでの取り組みと効果・課題を丁寧に検証し、複合災害リスクを含む有効な施策を25年度以降も切れ目なく講じてほしい。

23年は全国で250超の河川氾濫、1450件の土砂災害が発生した。24年も7月に秋田、山形両県で死者を出す記録的な大雨、甚大な浸水被害に見舞われた。政府の加速化対策も十分ではない。国交省は堤防の整備や、川底の土砂を取り除いて氾濫を防ぐ河道掘削などの根本的な治水対策のほか、家屋のかさ上げなど既存設備の能力向上の必要性を指摘する。線状降水帯の予測精度の向上も待たれる。

能登が24年に見舞われた二つの災害を教訓に、防災・減災への歩みを加速していきたい。

(2024/9/24 05:00)

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