(2024/9/25 05:00)
実質賃金の増加が9月から定着することが期待される。米国が約4年半ぶりに利下げに動き、過度な円安に歯止めがかかっただけではない。9月請求分から電気・ガス料金に対する政府補助金が時限的に復活するほか、10月からは全国で最低賃金も引き上がる。賃金の上昇率が物価上昇率に追い付き、節約志向の個人消費がわずかでも修正されるのか行方を注視したい。
厚生労働省の毎月勤労統計調査では、物価上昇を反映した実質賃金が7月まで2カ月連続で前年同月の実績を上回った。ただ6、7月は賞与の伸びが寄与し、一時的との指摘がある。実質賃金は5月まで26カ月連続で前年実績を下回っており、このプラスがいつ定着するかがデフレ完全脱却へのカギを握る。
米連邦準備制度理事会(FRB)が約4年半ぶりの利下げを決め、過度な円安に歯止めがかかった。多少の上下はあっても1ドル=150円台や160円台の歴史的円安は想定しにくくなった。輸入物価を引き上げる円安の修正は実質賃金のプラス定着に寄与すると期待される。
加えて、米FRBによる利下げペースは緩やかとされ、日銀が追加利上げを急がないとみられることも、日本の個人消費にはプラスと考えられる。急な円高進行を抑え、景気の先行き不安が軽減されると期待したい。
9―11月請求分の期間限定ながら、電気・ガス料金への政府の補助金が再開。10月から各都道府県で順次適用される最低賃金も、全国加重平均は23年度比で51円増の時給1055円となり、過去最高を更新する。
次期総理・総裁は、社会保障の持続可能性を担保する議論も深めてほしい。家計の将来不安を拭い、消費喚起につなげたい。また2023年度の企業の内部留保は初の600兆円超に達した。一部がさらなる賃上げに向かうことにも期待したい。
他方、米国・世界経済の先行き不透明感や米大統領選の行方など、為替相場の不安定要素が少なくない。米国経済が軟着陸できなければ、日本経済が減速しかねず、経済の好循環が回り始めないことにも留意したい。
(2024/9/25 05:00)