社説/ガザ戦闘1年 中東危機、沈静化の道筋模索を

(2024/10/7 05:00)

イスラエルとイスラム組織ハマスによる戦闘が7日で1年になる。パレスチナ自治区ガザで始まった戦闘は、周辺国を巻き込んだ地域紛争に拡大し、中東のパワーバランスを保ってきたイスラエルとイランの全面衝突が懸念される事態に至った。先鋭化するイスラエルを、同盟国の米国や機能不全の国連に抑止する力はない。中東危機の沈静化に向け、国際社会が結束できるかがあらためて問われる。

1年前のハマスによるイスラエルへの奇襲を引き金に、中東危機が深まった。イスラエルの過剰防衛により、ガザでは民間人を含む4・1万人以上の甚大な犠牲者を出し、国際人道法上の問題が指摘される。ガザの戦闘は周辺国にも波及している。イランが支援する中東各地の武装勢力とイスラエルが衝突。イスラエルは9月、親イラン組織「ヒズボラ」の最高指導者を殺害し、ヒズボラが拠点を置くレバノンの首都ベイルートも空爆した。10月1日にはレバノン南部に侵攻しており、「第2のガザ」とならないか憂慮する。

イスラエルによるヒズボラへの一連の攻撃は、バイデン米政権がイスラエルに短期停戦を求めた直後に行われた。面目をつぶされた米国には、中東危機の抑止を期待できそうにない。

9月の国連総会では、安全保障理事会の改革を求める指摘が新興国から相次いだ。米英仏ロ中の常任理事国が拒否権を持つ限り、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢に有効な対策を講じられない。ただ親中ロの新興国との利害もあり、改革のハードルは高いと言わざるを得ない。

中東情勢は、イスラエルとイランの全面衝突が懸念される事態にまで発展した。イランが1日、イスラエルに大規模ミサイル攻撃を行ったことで、イスラエルは報復を宣言した。バイデン米大統領はイスラエルによる報復を容認しており、報復の連鎖が拡大しないか懸念される。

拡大する中東紛争を鎮静化する道筋が見えてこない。それでも国際社会は結束し、停戦を促し続けることが求められる。戦闘の当事国に圧力もかけつつ、糸口を模索してもらいたい。

(2024/10/7 05:00)

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